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4月14日

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“絵描き”として私が自らに注意していることは、「固定観念で世界を見ないようにすること」です。

対象の良し悪し、善悪、その美しさなどの魅力のありかについて、誰かの意見やその時世の常識を鵜呑みにするようなことは決してあってはなりません。

たとえ自分の感じ方・考え方であっても、(かつて何らかの評価・成功をおさめた感覚・思考であっても)それを固定化してしまうと、

もはや目の前にある対象を見ているようでも、過去の感性のフィルターをかけて見方を決めつけてしまうようになり、

それ以外の要素を見逃してしまって、対象から新鮮な驚きや感動を受けることができなくなるからです。

 

しかし、この落とし穴は、人生のそこらじゅうに開いており、常に自分に対する戒めとして警戒していないと、

あっという間に落とし穴の中に落ちてしまいます。(そして実際にそこに落ちてしまっていると思われる人を見かけることも珍しくありません。)

ある意味、この感性の固定化の落とし穴の中にはまっているほうが、心理的には波風がなくて落ち着ける世界に感じられ、安住できると思います。

 

しかし表現者としてはそれは“死”を意味します。

そうなってしまっては、“その人にとっての世界の在り様”はもはやなんの変化もなく、安定してはいるが何の感動ももたらさない世界になってしまうために、

身体的にはどんなに高い表現技術を獲得していたとしても、新鮮な驚きや感動に突き動かされた表現活動は影をひそめてしまい

表現された物も(かつての自分の良き頃のコピーとなってしまって)どこか魂が抜けたものになってゆくからです。

実際の世界を新鮮な驚きと感動をもって受け入れつつ生き続けていて、その喜びを表現している人の創作にはとても及びもつかなくなります。

 

この実感を他者に伝えるのは難しいです。特に相手がすでに固定観念の平安の中にに落ち着いてしまっている人の場合。

しかし、プロとしてやっていこうとするのでなければ、それも仕方のないことかもしれない、と正直な所、私は少し諦めています。

 

しかし、表現者でなくともこの落とし穴に長居し過ぎると年齢にかかわらずボケ始めるのではないか、という気もするのですが・・・。自戒をこめつつ。